公爵家で起きる凶暴な霊の正体
- Gabby
- 1月26日
- 読了時間: 6分
更新日:2月14日
キャサリンは、ロンドンで最初にセッションを行う相手で、公爵家に嫁いだ女性だ。
スラリとしたスタイルに、上質な白シャツとブルージーンズを合わせたカジュアルな装いがとても洗練されている。普段はロンドンで生活し、週末になると夫と共に郊外に所有する城で過ごすという、まさに優雅な暮らしを送っている。
セッションが始まってノアが言う。
「君には、たくさんの感情が蓄積されているね。そして結婚して以来、ご主人のエネルギーに縛られているようだ。ご主人の家系には、ネガティブなものが絡んでいるようだね」
キャサリンは少し驚いた表情で答えた。
「はい。実は週末はカントリーサイドの城で過ごすのですが、そこで不思議で怖い現象が起きるのです。先日、娘が城を訪ねてきて一緒に過ごしたのですが、子どもの頃からその城が怖いと言っていました。彼女は敏感な子で、城の中で幽霊が見えると言うんです。さらに、人が城内の階段から突き落とされたという話も聞きました。娘はたまに城に来ることはあっても、絶対に泊まることはしないんです」
「なるほど。その城では過去に何かが起こったのかもしれないね。ちょっと見てみようか。
君の左側に執事が一人見える。この人、なかなかユーモアがあって面白い人物のようだね」
キャサリンはうなずいた。
「そうです。彼は本当に良い人で、私にとっては父親のような存在なのです」
「ただ、その執事が絡む形で、この城に何か問題があるように見える。だんだん、非常に暗いエネルギーが浮かび上がってきた…非常に暗い」
キャサリンは心配そうに聞いた。
「何か分かりますか?」
「この家系の先祖に、一人、気が狂った人物がいるようだね。もう少し深く見てみよう」
ノアには、徐々にこの家系にまつわる背景やストーリーがドラマのように見えてきた。
「この家系の先祖に、イギリス議会に反発して王政を復活させようとした公爵がいた。しかし、彼の試みは失敗に終わった。当時はフランス革命の影響で、イギリスでも同じような革命が起きるのではと恐れられていた。そこで、民衆を議会の下院に参加させ、貴族は上院で役割を担い、国会という場で貴族と民衆が同じテーブルにつく形の民主主義が導入された。だが、この先祖の公爵は庶民が政治に関与することに激しく反対し、それを覆そうとして秘密結社を作った。けれど、彼の計画はうまくいかなかった」
ノアは少し間を置きながら続けた。
「引退後、彼は庶民への強い憎しみだけを抱えて生きるようになり、不満と怒りを溜め込んでいった。そして、ついには気が狂って狂気の世界に入っていった。その憎しみを、自分のそばにいた庶民の代表でもある執事たちに向けた。彼は執事をひどくいじめ抜き、そのせいで何人もの執事が辞めていった。それでも公爵の執事への憎しみは止まらなかった。その憎しみのエネルギーがこの家系に残っているんだよ。この家の主人と執事の関係がいつもうまくいかないのは、その公爵の持つ庶民への憎しみが今も影響しているからなんだ」
キャサリンは思い当たることがある様子で口を開いた。
「ああ、そういえば、一人前の奥さんが執事をひどくいじめていたと聞いたことがあります。」
ノアはうなずいた。
「それは、この公爵のエネルギーに突き動かされたからだよ。でも、それだけじゃない。この城には、もう一つ暗いエネルギーが潜んでいる。」
キャサリンは驚きながら尋ねた。
「まだ何かあるんですか?」
「それは、この城にヘンリー8世が頻繁に訪れていたことに関係しているんだ。彼は愛人と結婚するために正妻と離婚した。それに対し、カトリック教会は厳しく反発し、『そんなことをする者は破門だ』と宣告した。しかし、ヘンリー8世は自分の権力を誇示し、『俺は王だ。イギリス中の教会をカトリックから脱退させる』と宣言した。そして、この決断に反対する聖職者たちの首を次々に切り落とし、反対者を皆処刑した。そのため、『首切りヘンリー』という不名誉な異名がついたんだ」
ノアは少し視線を鋭くしながら続けた。
「彼は、処刑を繰り返す中で多くの人々の怨みを買い、身の危険を感じるようになった。そして、身の安全を確保するために、自分の親友の城に身を隠した。その城こそ、君たちが週末を過ごしているお城なんだよ」
キャサリンは目を見開いた。
「そういえば、うちの先祖にヘンリー8世の親友だった人物がいると聞いたことがあります」
ノアはうなずいた。
「そうだね。ヘンリー8世は多くの命を奪ったため、計り知れない怨みを背負っていた。その彼が君たちの城に滞在していたことで、多くの怨念がその城に刻み込まれたんだ。その怨みが、城に暗い影を落とし、悲劇を引き起こしてきた。そして、この怨みのエネルギーに、祖先の公爵が抱いていた庶民への憎しみが重なり合い、強力な負のエネルギーを生み出していた。それが、人を殺したり、階段から突き落としたりする原因となっていたんだよ」
キャサリンは深く息をつき、しみじみと語った。
「なるほど…。ずっと城の中が重い感じがしていたのですが、まさかヘンリー8世のエネルギーまで影響しているとは思いませんでした」
「執事をいじめ抜いた祖先の公爵が僕の目の前に現れたよ。そして彼の憎しみのエネルギーを浄化した。同時に、城に残っていた怨みのエネルギーもすべて消し去った。これでもう、暗い影は消えたはずだ」
セッションが終わってしばらくすると、キャサリンから感謝の連絡が届いた。
「セッションが終わったあと、私は体も心も驚くほど軽く感じました。そして、城に残っていた暗いエネルギーが完全に消えたことを、敏感な娘が真っ先に感じ取ったようです。彼女が城に来たとき、『今までとは全然違う!すごく明るくて軽いエネルギーに変わっている』と言っていました。私もその変化に驚きました。さらに、執事についても何かが変わったように感じます。執事自身が軽やかになった印象を受けたのです。これまで抱えていた問題が、きっとノアのおかげである程度浄化されたのだと思います。私は執事とは最初から良い関係を築けていますが、主人との関係は以前からぎくしゃくしていて…。でも、最近はそれも少しずつ改善してきているのを感じます。本当にありがとうございました。」
キャサリンの言葉には、城や彼女自身の人生に訪れた変化への驚きと感謝が込められていた。
キャサリンから週末にす過ごすお城の写真を見せてもらった。それは圧倒されるほど大きな城で、おそらく部屋数は150室ほどあるのだろう。壮大な外観には歴史の重みが感じられ、中の様子も見せてもらったが、照明の影響もあり、やや薄暗い印象を受けた。しかし、これからこの城を訪れる人々は、以前とは明らかに異なる雰囲気を感じるだろう。重く沈んでいた空気が浄化され、明るく穏やかなエネルギーに包まれていることに気づくはずだ。
そして何より、この城で起きていたような、人が階段から突き落とされるような悲惨な出来事は、もう二度と起こることはないだろう。それを思うと、このセッションがどれほど意味のあるものだったかを改めて実感する。

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