アルゼンチン内戦の記憶を乗り越えて
- Gabby
- 2月12日
- 読了時間: 3分
更新日:2月14日
このセッションでは、南米アルゼンチンまで飛ぶ。
アルゼンチンの首都ブエノスアイレスに着くと、友人ラウラが待っていた。彼女は、アルゼンチン航空のCAとして活躍している。今日は彼女の紹介でマルセラという女性がノアのセッションに訪れた。
マルセラは、ブロンドのロングヘアにブルーの瞳を持つ、美しくて洗練された女性だ。
弁護士事務所で働き、英語も堪能であったため、スペイン語の通訳なしでセッションを進めることができた。彼女には長年交際している恋人がいるが、まだ結婚はしてない。
セッションが始まると、ノアはすぐに彼女の内面にある深い心の傷が見えた。
そして、静かにマルセラに語りかけた。
「マルセラ、君の中にはとても大きな心の傷がある。それは幼少期に受けたものだよ」
マルセラは小さくうなずきながら答えた。
「ええ、わかります」
ノアは優しい声で続ける。
「これからその傷を見ながら、癒していこう」
ノアがさらに深く見ると、心の傷の原因が明らかになってきた。
「君が5−6歳の頃、その傷が生まれた。見えてくるのは、死体であふれる街だ。トラックには山積みの遺体が乗せられ、交差点で無造作に放り出されている。まるで街の人々に見せつけるかのように」
マルセラはその言葉を聞くと、記憶が蘇ったのか、涙を流しながら話し始めた。
「そうです。その死体の中に、私の両親がいました。政治的な対立のせいで、多くの人が虐殺されたのです。私の両親も殺されました。でも私は運よく助けられ、別の人に引き取られて育ちました。あの出来事は忘れたくも忘れられません。普段は意識しないようにしていますが、時折、悲しみが込み上げてくるのです。そして、私だけではありません。多くの人が、愛する人を失いました」
ノアは優しくうなずき、言った。
「つらかったね。君はまだ幼い子供だったからね。ショックが大きく、深いトラウマになっているのがわかるよ。でも、君を引き取って育ててくれた人たちは、愛情のある素晴らしい人たちだったね。それが大きな救いだった。この心の傷を癒していこう。悲しみ、つらさ、苦しさ、寂しさ、あらゆる感情を浄化しよう」
ノアはしばらくの間、浄化を続けた。時折、ノアの頬にも涙が伝う。
「君のご両親の意識が見えたよ。彼らは『ありがとう』と言っていた。人間は魂の存在だから、死んでも決して消えることはない。ご両親は天から温かく君を見守っている。過去の悲劇は変えられないけれど、これからは君の心の中で整理がつくようになるよ」
マルセラは涙を拭いながら、深くうなずいた。
「ありがとうございます。浄化している間、あの時の光景が次々と浮かびました。最初は恐ろしくて直視できませんでしたが、次第に受け止められるようになりました。心が軽くなった気がします。ただ、今でも定期的に悪夢にうなされるのですが、それもなくなるでしょうか?」
ノアは微笑んで答えた。
「大丈夫。悪夢も消えるよ。今までは、悲劇を受け入れられなかったから夢として現れていた。でもこれからは『起こってしまった事実』として、心の中で整理できるようになる」
「嬉しいです。よかったです。本当にありがとうございます」
マルセラは最後まで涙を流していたが、帰る時には明るい表情になっていた。
その後、日本に帰国してから、マルセラからメールが届いた。
「定期的に見ていた悪夢が、一切なくなりました。起きたことは事実として自分の思いの中にありますが、胸の奥にあったつらい思いが消えて、心が軽くなりました。できるなら、またアルゼンチンに来てください。私と同じような苦しみを抱える人たちを、どうか癒してあげてください」

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