恐怖から自由に!
- Gabby
- 2020年9月13日
- 読了時間: 4分
更新日:2024年12月24日
タカは今日、白地にブルーの花柄が描かれたアロハシャツにジーンズを合わせて現れた。
ジーンズには太いシルバーのチェーンがついていて、見ているだけでも重たそうだ。それに革ジャンを羽織れば、恰幅の良い彼はまるでハーレーライダーのようだ。
タカが来るときは、いつもお菓子とお茶を用意している。まずは一緒にお茶を飲みながら最近の出来事を聞くのが恒例だ。彼は末っ子で、兄夫婦と一緒に薬局の仕事をしているが、そのことで不満が絶えない。お茶を飲みながら彼の愚痴を聞いてあげると、少し心が軽くなるようだ。その時間をノアと共に共有している私には、一人っ子である自分の気楽さを改めて実感させられる。
タカの抱える一番の課題は「恐怖」をどう克服するかだ。
彼は前世で多くの恐怖体験をしており、それが現在にも影響を及ぼしている。
数年前、酸素カプセルに入った際に鍵をかけられ、中から自力で出られない状況に陥ったとき、閉所恐怖症を発症してしまった。それ以来、電車や飛行機、さらには車に乗ることすら出来なくなり、大好きだった車も手放さざるをえない状況となり、長らく鬱状態が続いた。
そんな彼を救ったのがノアだった。ノアはタカの恐怖の原因を探り、その鍵を彼の前世の2つに見つけ出した。
その1つの前世、タカは船乗りだった。彼が乗っていた船は遭難し、数十人の仲間を失い、ただ一人、壊れた船の一部で暗闇の海を漂流しながら数日間過ごした末、命を落とした。その孤独と恐怖の記憶が、現在の彼の心に深い影響を及ぼしていたのだ。ノアはその恐怖を解きほぐし、彼の中から取り除いた。
恐怖が消えたことで、タカは再び車に乗れるようになった。その変化を喜んだ母親は、彼に新車をプレゼントした。母親は甘やかし気味だが、彼にとってその優しさは救いでもあった。タカはしばらくの間、家族を温泉に連れて行ったりドライブを楽しんだりしていたが、再び恐怖が顔をのぞかせるようになった。車に乗っても信号待ちやトンネルでパニックに陥ることが増えたのだ。
そこで再び、ノアのセッションを受けた。
そして、そのとき、もう一つ恐怖体験が色濃い前世が浮かび上がってきた。
ノアがタカに語りかける。
「古代エジプトで石の壁に象形文字が見える。当時、君はファラオだった。ファラオは生きているうちに自分の墓を作る。墓は地下に作られる。松明を持って下にずっと下りていく、そして曲がると部屋があって、そこに石棺を置いていろんな副葬品を入れる。その部屋は大きくて、大きなドアが2枚あって鍵がかけられる。暗いし怖い。あんな地下の暗いところに自分が埋められるかと思うと君はすごく怖かった」
タカは驚いた。
「えっ、ファラオですか・・・怖いです。想像するだけですごく怖い。酸素カプセルの中に入った時も、閉じ込められていると感じて怖かったです。あと、以前、午後3時近くに銀行に行った時、3時で閉店になる直前に、『ドアを閉めます』と聞いた時も、すごく怖くなったことを覚えています。それはファラオが地下の墓に埋葬されて、そこにある大きなドアが閉まって鍵をかけられる、ということに対しての恐怖と似ていますね」 タカが話しているとき、私はぼんやり彼を見つめていた。驚くことにそのとき、彼が本当にエジプトのファラオに見えてきた。冠をかぶったファラオとしての彼が見えてきたのだ。褐色の肌やダークブラウンの目。突然、彼がエジプト人に見えてしまった。それを彼に伝えると、ニコニコしながら、それはちょっと嬉しいと言った。
自分が地下に埋められることへの恐怖はもちろんあったが、もっと大きな恐怖があるとノアは言う。
ファラオが亡くなると彼の付き人たちも生きたまま副葬品として埋葬されてしまうという慣習があった。その時の付き人たちの恐怖は計り知れないという。付き人たちは、生きながら布を巻かれてミイラにされる。そしてファラオの墓の部屋の隣の部屋、壁の下の4面、大きな溝を作ってそこに埋められているとノアがいう。もちろんファラオもそのことは知っている。付き人たちの大きな恐怖はファラオに向けられた呪いのようになってしまっているとノアがいう。結果、付き人たちはファラオを恨むしかなかった。付き人たちの宿命として、当時の風習に従ってこのように死ぬしかなかった。生きたまま埋葬されるとは、どんなに残酷なことか。どれだけ苦しい時間を経て、やっと死ねるのか、想像を絶する。 ノアは大勢の付き人たちの顔が見えたそうだ。付き人たちの大きな恐怖のエネルギーが、時空を超えて、タカをずっと縛ってきた。
ノアはこの呪いをタカの中から抜き去った。
ノアは疲れ切っている様子だった。呪いと恐怖を抜き取った達成感と共に訪れる疲労感はノアにしかわからない。もちろんこの後、この抜きとったエネルギーを自分で浄化しないといけない、これがまた大変だ。 セッション後、タカの顔色は明るくなり目には希望が宿っていた。これから大好きな車にまた乗れるようになることへの高揚感でいっぱいだった。そしてその後、彼は車に乗れるようになった。車だけじゃなく、今ではバイクにも乗って楽しんでいる。

コメント