スタントウーマン:光を取り戻す
- Gabby
- 2018年3月4日
- 読了時間: 3分
更新日:1月17日
友人の紹介で、リンダがノアのセッションを受けにやってきた。
彼女は50代前半、ブロンドの髪に小麦色の肌、アスリートのように引き締まった体を持つカッコいい女性だ。かつてはハリウッド映画のスタントウーマンとして活躍し、現在はマリブのビーチ沿いで愛犬2匹と穏やかな生活を送りながら、動物保護のボランティアに取り組んでいる。
セッションが始まると、ノアはリンダの体に残るケガの跡や滞ったエネルギーの流れを感じた。そして、彼女の心の奥に深い傷があることを見抜いた。
「君が高校生の頃、とてもつらい出来事があったね」とノアが告げると、リンダは驚きの表情を浮かべ、涙があふれ出した。
「17歳のとき、性的暴行を受けたの。今まで誰にも言えなかった、母にも。でもその言葉を聞いた瞬間に、すべて、思い出したわ」と静かに語った。
長い間、ふたをしてきた悲しみ、怒り、恐怖 - 溢れ出す感情に、リンダは声を上げて泣いた。
ノアは静かに彼女を抱きしめ、その痛みを共に感じ取った。
「性的暴行の恐怖は、女性の心や細胞に深く刻まれる。そしてその時の凶暴なエネルギーが抜けない限り、悪夢や体調不良に悩まされる。これを浄化しないと、似たような出来事や人を引き寄せてしまう」とノアは優しく語った。
リンダが長年抱えてきた暗い感情は、浄化によって少しずつ解放されていった。
セッション中、ノアはリンダの心に「崖から海に落ちる人」の映像を見た。これは彼女の中にある心象風景だ。心に刻まれた内面の風景だとノアは言う。
リンダは高層ビル23階から飛び降りるスタントを経験していたが、崖のシーンには覚えがなかった。だが、次の瞬間、彼女は思い出した。
「そうだわ!私が飛び降りたスタントのシステムを作ったデザイナーが、実は崖から飛び降りて自殺したの。彼は明るく見えたけど、内面では絶望していたのね。鳥肌が立つわ。でも、なぜ、私の中に彼の姿が見えるの?」
ノアはこう説明した。
「17歳の出来事から、君は『どうせ私なんか』という気持ちや、『死んでもいい』という思いを抱えていた。それが、命の危険を伴うスタントへと君を向かわせた。そして、その『死にたい』という感情が、彼の絶望と共鳴していたんだよ」と。
セッションが終わると、リンダは涙を拭いながら静かに笑った。
「こんなに心が軽くなったのは初めて。見える景色まで明るく感じるわ」と、彼女は微笑み、目には希望の光が宿っていた。
「これから第二の人生を始めたいわ。恋人だって・・・できるかしら?」と少し照れくさそうに言った。
ノアがリンダをハグすると、彼女の中から温かい安堵と希望が流れてきた。
重たい心の荷を下ろし、暗闇から解放されたリンダの表情には、新しい人生への光が輝いていた。

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